2022年7月、久しぶりに会った大好きで大切な友達から「山本印店さんの印鑑」の話を聞きました。
不思議で心に残るエピソードに強く惹かれ、私は胸の奥がざわめくのを感じました。
「これは今すぐ掴まなきゃ」── そんな直感に突き動かされ、震える手で予約の電話をかけました。
運命のようなタイミングだったかもしれない
2022年7月20日。
私は世田谷の「山本印店」を訪れ、仙人のような職人・桃仙さんに印鑑を彫っていただきました。
その一ヶ月前、フィレンツェスタイルの彫金を習い始めていた私は、知らず知らずのうちに「自分のために生きる道を選び直す」小さな革命の一歩を踏み出していたのかもしれません。
桃仙さんはこう語っています。
今振り返れば、まさにそのタイミングだったのかもしれません。

鑑定でいただいた言葉
鑑定で桃仙さんから告げられた言葉を、今でも鮮明に覚えています。
「まだ間に合う」「欲しいものは欲しいと言っていい」──
当時は軽く受け止めていたのに、今メモを読み返すと、その言葉は私の心を深く解き放ちます。
胸の奥にずっと押し込めてきた声が、はじめて自由になったようで、静かに涙が込み上げます。
ずっと「人のため」に我慢してきた自分を、やっと許されたようで。
その許しは、私の奥深くに眠っていた芽を、そっと解き放つようで。
あの日注文した印鑑は、ただの道具ではなく「私が私として生き直す」証でした。

今につながるものづくり
数日前まですっかり忘れていたこの体験。
日常に埋もれて忘れていたけれど、この体験は静かに根を張り、今の制作を支えていました。
Sanctumは、持ち主が「もう一度、自分のために咲きたい」と願ったとき、その決意をかたちにするジュエリーです。
迷いながらも歩き出そうとするその瞬間、手に宿る光がそっと背中を押してくれる。
ジュエリー自体が誰かを魔法のように変えるわけではありません。
けれど、“変わりたい”と願った人の手の中で、それは確かな証となります。
桃仙さんの言葉を思い出すたび、私は確信します。
私が作りたいのは、飾りではなく「生きる選択の証」なのだと。

まだ間に合うから
何度も繰り返していただいた「まだ間に合う」。
その言葉は、今も私の背中を押し続けています。
もしあなたが、優しすぎて自分を後回しにしてきたなら ──
「自分のために生きる」その一歩を、どうか怖がらないで。
まだ間に合うから ──
その言葉が、あなたの中の小さな芽を照らしますように。



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