自分のために生きていい −山本印店で言われたこと−

2022年7月、久しぶりに会った大好きで大切な友達から「山本印店さんの印鑑」の話を聞きました。

不思議で心に残るエピソードに強く惹かれ、私は胸の奥がざわめくのを感じました。

「これは今すぐ掴まなきゃ」── そんな直感に突き動かされ、震える手で予約の電話をかけました。

山本印店 ─
現在は予約なしで来店可能だが、経営者やアーティストが開運のために行列をなして印鑑の制作を依頼した不思議なハンコ屋さん。

住所:東京都世田谷区池尻2-37-13
URL:https://www.yamamotointen.com/

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運命のようなタイミングだったかもしれない

2022年7月20日。

私は世田谷の「山本印店」を訪れ、仙人のような職人・桃仙さんに印鑑を彫っていただきました。

その一ヶ月前、フィレンツェスタイルの彫金を習い始めていた私は、知らず知らずのうちに「自分のために生きる道を選び直す」小さな革命の一歩を踏み出していたのかもしれません。

桃仙さんはこう語っています。

運勢をよくするハンコなど存在しない。
その人の運勢が変わったときに、僕のハンコを作りにくる。

今振り返れば、まさにそのタイミングだったのかもしれません。

鑑定でいただいた言葉

鑑定で桃仙さんから告げられた言葉を、今でも鮮明に覚えています。

優しすぎる。質のいい人間性。
これからは「私の好きにさせてください」って生きていい。
もう少しズルく生きていい。欲しいものは欲しいと言っていい。
まだ間に合うから、人のためではなく、自分のために生きていい。

「まだ間に合う」「欲しいものは欲しいと言っていい」──

当時は軽く受け止めていたのに、今メモを読み返すと、その言葉は私の心を深く解き放ちます。

胸の奥にずっと押し込めてきた声が、はじめて自由になったようで、静かに涙が込み上げます。

ずっと「人のため」に我慢してきた自分を、やっと許されたようで。
その許しは、私の奥深くに眠っていた芽を、そっと解き放つようで。

あの日注文した印鑑は、ただの道具ではなく「私が私として生き直す」証でした。

今につながるものづくり

数日前まですっかり忘れていたこの体験。

日常に埋もれて忘れていたけれど、この体験は静かに根を張り、今の制作を支えていました。

Sanctumは、持ち主が「もう一度、自分のために咲きたい」と願ったとき、その決意をかたちにするジュエリーです。

迷いながらも歩き出そうとするその瞬間、手に宿る光がそっと背中を押してくれる。

ジュエリー自体が誰かを魔法のように変えるわけではありません。
けれど、“変わりたい”と願った人の手の中で、それは確かな証となります。

桃仙さんの言葉を思い出すたび、私は確信します。

私が作りたいのは、飾りではなく「生きる選択の証」なのだと。

まだ間に合うから

何度も繰り返していただいた「まだ間に合う」。

その言葉は、今も私の背中を押し続けています。

もしあなたが、優しすぎて自分を後回しにしてきたなら ──

「自分のために生きる」その一歩を、どうか怖がらないで。

まだ間に合うから ──

その言葉が、あなたの中の小さな芽を照らしますように。


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この記事を書いた人

ジュエリーデザイナー・クラフトマン

[略歴]
IT・工学系の大学院卒業後、企業ネットワークの企画・設計・構築業務に従事。好きな分野だったがドーパミン不足により屍になる。
8年の寝たきり療養を経てワイヤークラフトに興味を持ち、その後ジュエリー職人を目指し、彫金、宝石研磨、宝石鑑別を学び始める。

[趣味]
ふくろう飼育、映画鑑賞、読書、インテリア。
現在は引退したが自動車競技、乗馬、チェロ。四輪ではJAF公認スピード競技でシリーズ2位を獲得。

[特技]
写真撮影とPhotoshop加工。

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